製造業における固有技術と管理技術の意味と違い、品質改善のアプローチに固有/管理、どちらの技術がお勧めかを解説します。
固有技術とはものづくりに絶対に必要な技術、管理技術とは品質の良いものを安く早くできる技術です。
もっと簡単にいうと、固有技術はサイエンス(科学)、管理技術はマネジメント(経営)といってもいいでしょう。
以下、詳細説明です。
【固有技術とは】
技術とは開発された科学を実際に応用する手段です(大辞林より)。 固有とは原料、装置、工法、技能を駆使して製品を作る知識体系を持っていることです。
なので、固有技術とはものづくりができる知識と手段となります。
【管理技術とは】
管理とはある規準などから外れないよう、全体を統制すること。事が円滑に運ぶよう、事務を処理し、設備などを保存維持していくこと(大辞林より)。
なので、管理技術とは製造業として成り立つための知識と手段となります。
製造業において固有技術は絶対に必要です。固有技術があればモノはつくれます。
しかし、管理技術がないと商売として成り立ちません。製品の品質が良く、安く、早く手に入らないとみんな買いませんよね。倒産します。
固有技術と管理技術は製造業では欠かすことのできない両輪なのです。
管理技術で最も有名なのは ISOです。品質マネジメントシステム(ISO9001)とか環境マネジメントシステム(ISO14001)などあります。他にもたくさんあります。
全般:5S 品質:品質管理、タグチメソッド、シックスシグマ 作業:IE 安全:FTA コスト:VE・VA 物流:SCM
管理技術の特徴は、どの業種にも適用できるよう体系化されていることです。「管理技術=手法」と捉えても良いです。
【技法とは】
技法とは目的に対して効率よくアプローチするテクニックです。
管理技術と技法をごちゃまぜに考えている人がいますが、管理技術と技法は別次元のものです。
技法には、QC7つ道具、チェックリスト、直交表、回帰分析などたくさんあって、管理技術のツールとして使います。
コスト削減手法であれば、ブレインストーミングやアイデア発想法でコスト削減の素材を探し、KJ法で素材をまとめて、NM法で組合せや改善案を具体化していくといったように技法を使います。
もちろん、ブレインストーミング、アイデア発想法、KJ法、NM法は技法です。
技法は目的に合わせて使い分けます。「技法を1つ知っていれば、目的が達せられる」そんなことはマレです。技法の習得にはその目的をくれぐれも忘れないようにして下さい。
【経営コンサルタントと技術コンサルタントの違い】 閑話休題
経営コンサルタントは管理技術の専門家、技術コンサルタントは固有技術の専門家です。 私は工場で品質改善の指導しているものですから、技術コンサルタントとよく間違われます。
しかし、手法の指導ですから、管理技術なわけで、経営コンサルタントが正しいのです。なので名刺にはマネジメントコンサルタントと書いています。
【品質改善の入口を間違えない】
前置きが長かったですが、ここから本題。私が主張したいことです。
合成樹脂の糸を作っている工場の例話です。糸に成形後、糸を巻き取る工程で、糸がぷつりと切れる問題がよく発生していました。
なぜ切れるのでしょうか? こういった工程内トラブルはよくありますよね。あなたが担当者だったらどうします??
この担当者はこう考えました。
まず、糸を巻き取る時の力(テンション)をギリギリまでさげました。それでもまだ糸が切れてしまいます。
では、糸の強度が弱いのだろう。糸の強度を上げるべく開発部門に依頼し、原料配合・製造条件を見直しました。
さすがに強度を上げたのだから、もう糸は切れないだろう・・・という期待は見事に裏切られ、まだ糸は切れてしまいます。
まだ強度不足なのか、もっと強度を上げよう・・・。また切れる。
よし最後の手段だ。今度は糸の直径の製造規格を太くするよう品質保証課に交渉しよう・・・。
さて、あなたはこの改善の方向性はあっていると思いますか?
糸が切れる現象を強度不足、固有技術の問題と捉えると解決に時間がかかります。
糸が切れずに製造できることもあるのですから、切れる時と切れない時の差は何だろうかと考えるのが、改善の入口としては正解です。
1ロットでも不具合なしに良品がとれるならば、糸の太さにバラツキがある、製造工程の管理のまずさがある、管理技術の問題と捉えるべきなのです。
品質改善の正しいアプローチであれば、改善に要する時間は劇的に短くなります。
まずは製造因子にバラツキがないかと考えてください。
以上
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